五年ほど前、羽生さんが勢いにのって勝ち始めた頃、私との対局で序盤から常識では考えられない手をどんどん指してくるのに驚かされたことがある。その時は「なにをやっているんだ」と思ったが、しばらくして「これはなかなかできることではないな」と感嘆したものだ。当時、彼は好調で、勢いもあり、序盤は常識的に指してもそこそこに勝てたはずである。しかし、そうした戦い方に飽き足らず、いろいろな可能性を模索し、実戦の場で試みていたのだ。
谷川浩司 「集中力」 P160
羽生さんご本人の著書でも、「新手を実戦でいきなり試すことを心がけている」との記述が。